活動の考え方

人の姿が少なくなった洲巻に、
もう一度、洲巻へ行く理由を。

9月20日に一日イベントを開いて終わり、にはしたくありませんでした。使われなくなった農地に人が集まり、そこで洲巻を知る人が増える。泥ん子運動会は、そのためにまずやってみた活動です。

準備を始めた頃は、イベントを開けば自然と人が集まると思っていました。実際は、来てもらうことも、土地を使わせてもらうことも、安全に一日を終えることも簡単ではありませんでした。だから、開催できた事実だけでなく、準備の中で分かったことも残します。

珠洲市若山町洲巻で泥ん子運動会を開催した農地
9月20日に泥ん子運動会を開催した、珠洲市若山町洲巻の田んぼです。

現地で感じたこと

土地は残っている。
でも、人の関わりは減っている。

私たちは実際に洲巻へ足を運び、田畑や道、暮らしの痕跡が残る一方で、日常的に人が行き交う姿が少なくなっていることを感じました。

土地洲巻の農地
使われなくなっていた農地を、再び人の手が入る場所へ。
場所洲巻の田んぼの近景
農地の状態や周辺を実際に見ながら、できることを考えてきました。
人能登で活動する学生メンバー
現地へ行き、人と話すところから私たちの活動は始まりました。

洲巻の現状

人が少なくなることは、
「行く理由」が少なくなることでもある。

洲巻は珠洲市若山町にある地域です。震災の影響などを経て住民が離れ、以前に比べて人の関わりが大きく減りました。私たちが現地を訪れたとき、田畑や道、暮らしの痕跡は残っている一方で、日常的に人が行き交う姿はとても少なくなっていました。

現地で感じたのは、人が減ると「この場所へ行く理由」も減っていくということでした。立ち話をする人、子どもの声、友人が訪ねてくる機会、田畑に入る人の手。そうした日常が少なくなるほど、地域の外の人が関わる機会も減っていきます。

だから私たちは、最初から大きなことをしようとは考えませんでした。まずは「この日に洲巻へ行ってみよう」と思える理由を一つつくること。それが、泥ん子運動会です。

大切にしたかったのは、「地域のために何かをしてあげる」という進め方にしないことでした。外から来た私たちだけで決めるのは違うと思ったからです。土地を借りるときも、当日の動線を考えるときも、地域の方や現地で活動してきた方に教えてもらいながら決めました。

洲巻に必要なものを私たちが決めるのではなく、まず自分たちが通い、話を聞き、一緒にできることを探す。その姿勢は、イベントが終わった今も変えたくありません。

洲巻の農地

なぜ、泥ん子運動会なのか

課題を知ってから来るのではなく、
楽しさから関わりが始まってもいい。

田んぼに入って、子どもも大人も泥だらけになって、知らない人同士でも同じ競技で笑う。地域の課題を難しく語るより先に、「楽しかった」「また来たい」から関わりが始まってもいいと思います。

「支援しなければ」ではなく、「面白そうだから行ってみる」「子どもに泥遊びをさせたい」「友人と参加してみたい」。そんな理由で洲巻を訪れた人が、そこで土地を知り、人と出会い、次にまた来る理由を持つかもしれません。

私たちは、応援するだけでなく、実際に能登へ行く人を増やしたいと考えました。泥ん子運動会は、その最初の企画です。

田んぼを会場にしたのも、珍しさだけが理由ではありません。普段なら通り過ぎてしまう土地に実際に足を入れ、泥の感触や広さ、周りの景色まで体で知ると、その場所は急に「知らない場所」ではなくなります。写真で見るだけだった土地に、自分の記憶が一つ加わる。その感覚をつくりたかったのです。

もちろん、泥ん子運動会だけで地域の課題が解決するわけではありません。まずは、洲巻へ来て、人や土地を実際に知る人を増やしたいです。

泥ん子運動会で子どもと学生スタッフが泥だらけになって楽しむ様子
9月20日、子どもと学生スタッフが同じ田んぼで泥だらけになって楽しみました。

この土地で大切にすること

イベントの日だけで、終わらせない。

私たちが大切にしたいことを、三つに整理しています。

土

土地を、もう一度使う。

今回の田んぼは、イベントの日だけの遊び場ではありません。再び農地として使われていく土地に、9月20日は多くの人が実際に入る機会になりました。

人

人が来る理由をつくる。

義務感ではなく「楽しそう」「行ってみたい」から始まる関係を大切にします。最初の理由は「楽しそう」で十分です。

次

一日で終わらせない。

9月20日に知り合った地域の方、学生、家族、ボランティア、企業や団体との関係を、次の活動でも生かします。

実際にやってみて

小さな開催だったからこそ、
見えたことがありました。

9月20日の競技参加者は15名、見学を含めた来場者は約30名でした。当初思い描いていたより大きなイベントではありません。それでも、普段は人の声が少ない田んぼに子どもたちが入り、大人も学生も同じ競技で泥だらけになり、笑い声が続いた時間は確かにありました。

人数だけを見れば、「もっと集められたはず」と思う部分もあります。実際、告知の仕方、申込までの導線、交通手段の分かりにくさ、遠方から能登へ来るハードルなど、改善したいことはたくさん残りました。一方で、来てくれた一人ひとりと話せる規模だったからこそ、誰がどこから来たのか、何を楽しんでくれたのかを近くで見ることができました。

印象に残っているのは、競技そのものより、その前後の時間です。泥を落としながら話したり、子どもと学生が自然に一緒に遊んだり、地域のことを聞いたりする場面がありました。私たちが想像していた「交流」は、特別なプログラムの中ではなく、そういう何気ない時間に生まれていました。

次に同じような活動をするときは、参加人数だけでなく、こうした自然な会話が生まれる時間も大事にしたいです。

泥ん子運動会2026の参加者とスタッフの集合写真
大きなイベントではありませんでしたが、当日は参加者同士で自然に話す場面がありました。

うまくいったことだけではありません

続けるなら、難しかったことも残しておきたい。

初めて一から企画して分かったのは、地域イベントは「面白い内容を考える」だけでは成り立たないということでした。

集

来てもらう難しさ

告知を出せば人が集まるわけではありませんでした。珠洲までの距離、交通手段、予定の合わせやすさ、初めてのイベントへの不安。参加を決めるまでには、こちらが思っていた以上に多くの壁があります。

現

現地でしか分からないこと

田んぼの深さ、足元、駐車や移動の導線、着替えや泥を落とす場所。机の上では気づけないことが多く、何度も現地を見ながら準備を変えました。

続

一日で終わらせない難しさ

イベント当日は分かりやすいゴールがあります。でも本当に難しいのはその後です。誰と連絡を取り続けるのか、土地とどう関わるのか、次の活動へ何を残すのか。ここからの方が長いと感じています。

開催後に考えたこと

人が集まれば、それで解決するわけではない。

9月20日に人が集まったからといって、それだけで洲巻の課題が解決するわけではありません。むしろ私たちにとって、その日がスタートです。

一度来た人が、半年後や一年後にまた能登へ来る。友人を連れてくる。地域の方ともう一度話す。そんな人が少しずつ増えたらいいと思っています。

毎回大きなイベントを開く必要はありません。農作業を手伝う、地域を歩く、誰かに会いに行く。戻って来やすい関わり方を増やしたいです。

続

次の活動へ

実施後に分かったことを記録し、次年度の運営で使います。

縁

出会いを残す

当日だけで終わらず、地域・学生・団体がまた一緒に動ける関係を残します。

若

若者が戻ってくる

一度来た学生が、次は友人を連れて来る。そうやって、もう一度来る人を少しずつ増やしたいです。

農

農地のその後を見る

人が遊んだ土地が、その後どう使われていくのか。農地再生と人の関わりを切り離さず考えます。

学生としてできること

私たちだけで、地域を変えられるとは思っていません。

農地の復旧、農業の継続、地域の暮らし、震災からの復興。どれも学生数人だけで解決できる話ではありません。専門の知識も、資金も、長年の地域経験も、私たちには足りないものがたくさんあります。

だからこそ、自分たちにできないことまで抱え込まないようにしています。農業のことは農業を続けてきた方に聞く。地域のことは地域の方に聞く。安全面や制度のことは、詳しい人に助けてもらう。分からないことは、詳しい人に聞いてから進めます。

その一方で、学生だから動きやすいこともあります。知らないからこそ素直に聞けること、友人を誘って現地へ行けること、面白そうな企画を考えて試せること、SNSや学校を通じて同世代へ伝えられること。私たちにできるのは、同世代が能登へ行ってみようと思える企画や発信です。

人が変わっても続くために

この活動を、
誰か一人のプロジェクトにしない。

学生の活動では、卒業や進路によって運営する人が入れ替わります。だからNOTO Re:Bloomは、今のメンバーがずっと続けることを前提にした活動にはしたくありません。

会場探し、地域の方との相談、安全面の準備、協賛・協力のお願い、広報、当日の運営、開催後の報告。2026年に分かった手順や難しかったことを、次の人が見返せるように記録します。

同じ人が続けることより、担当が変わっても地域との関係や、何を考えて決めたのかが分かることを大事にします。

もちろん、毎年まったく同じことをする必要もありません。土地の状態や地域の希望、参加する人に合わせて、その年の運営者が変えていける余白も残したいです。

2026年の泥ん子運動会は、その最初の例です。次は別の学生が中心になっても、一から全部調べ直さず、今年の記録を使って動けるようにします。

泥ん子運動会2026終了後の参加者と運営スタッフ
地域、参加者、学生、協力者。いろいろな人が関わって、一つの活動ができました。

NOTO Re:Bloom

「咲かせる」のは、花だけではありません。

使われなくなった土地にもう一度役割が生まれること。人の少なくなった場所に笑い声が戻ること。能登を知らなかった若者が、次は友人を連れて戻ってくること。私たちは、そうした変化が少しずつ増えることを「Re:Bloom」と考えています。

「元に戻す」だけではなく、今の能登でできる関わり方をつくる。以前と同じ景色には戻らなくても、別の形で人が集まり、土地に役割が生まれれば、それも一つの再生だと思います。

泥臭い挑戦で、能登を咲かせる。私たちのスローガンにある「泥臭い」は、きれいに成功することだけを目指さないという意味でもあります。うまくいかなかったことも残し、次は少し直す。それを繰り返します。

Re

もう一度

失われたものを単純に元へ戻すのではなく、今の能登で続けられる関わり方を考えます。

花

人のつながりを増やす

土地、農業、地域、学生、家族。違う立場の人たちが知り合い、次も会える関係を増やしたいです。

これからも

一度きりではなく、何度でも能登へ。

今回の活動で洲巻との関わりが終わるとは考えていません。次年度の学生が地域の方と相談しながら活動を決められるよう、今年の記録を残します。大きな企画でなくても、現地へ行き、話をし、手を動かす関係を続けたいです。

最初から正解が決まっている活動ではありません。現地へ行って話を聞き、その年の状況に合わせてやり方を考えます。途中から参加する人にも分かるよう、何をどう決めたかを記録します。

「能登に何かしたい」と大きく構えなくても、まず一度来てみる。その一歩から始まる関係を、これからもつくっていきます。

9月20日の一日を、次へ。

開催当日の実績と記録を公開しています。

開催レポート9/20の記録